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20代後半独身男。軽いうつ病&SADによる休養を終えて無事に転職成功。その後の生活+愛犬「あんこ」の話。
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著者:津島佑子
出版社:講談社
発行月日:1998年6月

お勧め度:★★★★(星5つが最高)

言わずと知れたNHKの連続テレビ小説、「純情きらり」の原作本。
著者は、太宰治の次女でもある津島佑子。
このドラマを偶然見たのだが、意外に面白かったので毎日見るようになった。
「おばちゃんじゃん。」ってよく言われるが、余計なお世話ですから。


ドラマと原作本はあまりに内容が違う。
どちらも基本的には大河ドラマなのだが、「純情きらり」の人生賛歌的な明るい雰囲気に対し、原作本は家族愛を前面に出した人間ドラマ的要素が強く、また、常に死の影が物語に影を落とし悲劇的でもある。

ドラマと原作本の主な違いを挙げてみる。

1. 主人公が桜子ではなく、有森家の末っ子の勇太郎
2. 舞台が愛知県岡崎ではなく、山梨県甲府市
3. 一家の経済的事情より勇太郎の進学が優先され、桜子は音楽学校へは進学を諦めた
4. 兄弟は4人ではなく、8人
5. 桜子の性格はもっと穏やかで、ドラマの様に「猪突猛進型」ではない
6. ドラマのマロニエ荘は出てこないし、そこの住人で実際に登場するのは杉冬吾のみ
7. 松井達彦は米国帰り金持ち一家の次男坊で、物語にはほとんど登場しない
8. 斎藤先生は登場するが、ドラマの様な誠実さはない
9. 杉冬吾が超破滅型の駄目男として登場
10.母親のマサの死は父親より後

一番の違いは主人公が桜子ではないこと。
原作本の桜子はまさに悲劇のヒロイン。
勇太郎の進学のために自分の夢を諦め、戦前、戦中、戦後を通して家族のために奔走し、その短かった生涯を捧げる姿がとても切なく、やり切れない。
ただし、登場人物の一人でしかないにもかかわらず、その存在感は抜群。
天真爛漫でありながらも、愛情溢れる人柄は、誰もが好印象を持つ。
それにひきかえ、勇太郎の馬鹿さ加減には呆れる。
兄弟の多大なる援助と犠牲の上で進学したにも関わらず、実家は売却するは、日本は嫌だとアメリカへトリップするは、まさに行動が味噌っかす。
登場人物の中で、一番不快感を持ってしまう。
ちなみに、二番目に嫌いな登場人物は笛子。
戦前の頭の固いおばさんそのままに、ヒステリック、保守的、自己中心的、偏った価値観。
どうも好きになれない。
これに比べれば、ドラマの笛子はなんていい人なのだろう。

また、劇中では、驚くほどの登場人物がバタバタと死んでいく。
その原因は、大半が「結核」。
国民病と言われていたぐらい、当時は蔓延していたという知識はあったし、自分の一族にも結核で死んだ人間が何人もいることを聞いてはいたが、この本を読むと更に実感が伴い、その恐ろしさが理解できる。
この時代に生きた人達は、生と死が常に隣り合わせ。
「必死に生き、あっさり死ぬ。」
こんな言葉が脳裏に浮かび、実際、大変な苦労があったのだろうが、この時代に生きた人の誰もが生きたという「実感」はあったのだろうと、羨ましく思ってしまった。

濃くて、重い。
これがこの本を読み終わった直後の感想。
各登場人物のセリフが妙に生々しく、常に描写にリアル感が伴う。
本なのに劇を見ているような感じで、物語に入り込んでいる上に、話が悲劇的だったりするので、ダメージをモロに喰らってしまう。
とにかく読破するには心の体力が必要。
反対に言えば、それだけ魅入ってしまうぐらいに、深くて、面白い作品。
こんなことは「大地の子」以来。

そして、ドラマ「純情きらり」は原作本の桜子が、もし自分の将来を自由に選択できたらどうなっていたのだろう、明るい未来を用意したらどの様ない生き方をしたのだろうという「if」の物語。
原作本の桜子はあまりに悲惨なので、ぜひともハッピーエンドにしてもらいたい。

なお、評価が星4つなのは、もう一度読む気にはなれないから。僕には物語が重すぎる・・・。
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